家庭の医学百科より

血を吐く
喀血と吐血の違い

口から血を吐くといっても、いろいろ
な場合が考えられますが、その代表
的なものは喀血と吐血です。

▼喀血の場合
 ほとんどが肺や気管支などの呼吸器からの出血で、せきといっしょに排出します。また、たんとまじり、吐いた血の中に泡がまじることが多いのも特徴です。
 血液の色は鮮紅色がふつうで、量は吐血ほど多くはありません。
したがって、喀血だけで生命に危険が及ぶことは少ないのですが、血液が気管ににつまって窒息死する危険があるので注意が必要です。

▼吐血の場合
 最も多いのは、食道から胃を通り、十二指腸球部までの上部
消化管に病変があるときです。したがって、その70%は胃・十二指腸潰瘍です。嘔吐とともに血を吐くのが吐血の特徴で、血液の色は暗褐色のことが多いのですが、血液の色だけで喀血と区別することはなかなか困難です。
というのも、上部消化管からの出血でも、その量が多く、しかも出血後まもなく吐血されると鮮紅色だからです(この場合、せきとともに血を吐いたか、嘔吐とともに血を吐いたかが、喀血と吐血の区別をする重要な手がかりとなる。)胃からの吐血は一般に量が多く、洗面器いっぱい吐くこともあります。
量が多いのは、胃液や食べ物の残りかすがまじっているからで、実際の出血量はそれほど多くないものです。


喀血の起こる病気


▼大量の喀血がある
 肺に空洞ができる病気の場合は、出血量の多い喀血をみることがあります。肺結核・肺膿瘍などです。

▼少量の喀血、血たんがある
 肺がんや肺膿瘍でも、破れた血管が小さければ、少量の喀血や血たんで
すむことがあります。急激な胸痛と呼吸困難を伴う場合は肺梗塞の疑いがあります。肺結核、気管支炎、肺真菌症、肺炎、肺水腫などでも少量の喀血や
血たんがみられることがあります。
また、白血病や紫斑病、血友病、膠原病、動脈硬化症、腎炎など血液の病気や全身的な疾患によっても起こることがあります。
そのほか、肺などの外傷によって喀血をみることがあります。


吐血の起こる病気


▼鮮紅色の吐血がある
 突然、鮮紅色の血のかたまりが大量にどんどん吐血されるときは、
食道静脈瘤からの出血が疑われます。
大酒家であったり、顔色が黄色く、黄疸症状を伴っています。
食道静脈瘤をつくる病気には、重症の肝硬変、門脈圧亢進症、があります。
門脈は肝臓に血液を運ぶ血管で、食道静脈瘤が破裂すると、初回の出血で死亡することが多いので、大至急、救急病院に入院させることが必要です。 そのほか、鮮紅色の血のかたまりを吐き、ショック状態に陥る病気としては、胃・十二指腸潰瘍の露出血管からの出血、また動脈性出血では、胸部大動脈瘤の食道穿通、腹部大動脈瘤の腸管穿孔などです。いずれの場合も、大至急、救急病院に運ばなければ危険です。老人では逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニアの疑いもあるので、すぐに内視鏡設備のある内科医を受診させます。さらに、マロリー・ワイス症候群や薬剤による急性の食道潰瘍などもあります。

▼黒っぽい血を吐く 
 黒っぽく変色していれば、胃にたまっていた血液です。胃がん、十二指腸潰瘍、胃手術後吻合潰瘍、急性胃炎、胃肉腫などが疑われます。

▼少量の吐血がくり返しある
 少量でも続けて出血するときは、生命に危険が及ぶこともあるので、次のような症状に注意して、思いあたる症状があれば急いで医師の手当を受けます。
@上腹部痛、特に食後か空腹時、あるいは早朝時に腹痛がある。
A胸やけ(逆流性食道炎を疑う)。
B黒色便がある(胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどを疑う)。
C全身倦怠、黄疸、腹がはる(腹水、肝硬変を疑う)。
D貧血、発熱が続く(白血病を疑う)。
E鼻血や歯ぐきからの出血が続く(凝固異常による出血傾向を疑う)。
Fそのほか、肺や心臓、腎臓などに病変がないかどうか。


喀血、吐血の手当

 血を吐くと少量の血液でもあわてるものです。特に本人は驚き、興奮のためにますます出血を多くすることもあるので、周囲の人が落ち着かせることがたいせつです。そして、喀血か吐血かの区別をして処置を行います。

喀血の場合
 どんなに多く吐いても、生命に危険が及ぶということは少ないものです。あわてないで処置を行います。
@吐いた血液が気道を閉塞しないように顔を横に向ける。
Aその際、左右どちらかの肺から出血したかを見分け(本人にはわかっていることが多いが、意識不明の場合は胸に耳をあてゼーゼーという音が強いほうから出血している)、出血している側の肺を下にして横に寝かせる。
B吐いた血は飲み込ませないようにし、呼吸を整えさせる。呼吸が整えば気持ちも落ち着き、せきも少なくなる。話をさせてはいけない。
Cのどが渇くときは、冷蔵庫の氷の小片をガーゼに包んで口に含ませる。
D急いで医師の往診を依頼する。無理な場合は救急車を呼んで、からだをできるだけ動かさないようにして運ぶ。

吐血の場合
 大量の吐血のときは、緊急処置の必要があることが多いので、大至急次のような手配をします。
@救急車を呼ぶ。同時に、吐いたものが気管に入らないように顔を横にして寝かせる。
Aどんどん吐血するときは、腹部にじかに氷のうをのせ、幅広い帯でしっかり固定する。
B少量の吐血ではあわてることはないが、できるだけ早く受診する。


生活習慣病をチェック


 喀血では肺がんが心配です。
中年以降の人で、少量の喀血、あるいは血たんがある場合は、急いで精密検査を受けることが大切です。
 吐血では食道静脈瘤、胃・十二指腸潰瘍や胃がんが心配です。少量の出血でもすすんで内視鏡検査を受けましょう。
 しかし、喀血や吐血がおこるところまで進行した肺がんや胃がんは、治癒率が悪くなるので、中年を過ぎたら、年に最低1回は定期検診を受けるようにすることがたいせつです。
特に、日本酒二合以上を毎日続けている人、タバコを一日15本以上吸う人などは年2回の健康診断が必要でしょう。