暮らしと健康2002年3月号掲載

≪暮らしと健康相談室≫より
●出産後つねに胃もたれのの状態で、くすりを飲んでも効果がない
胃のはたらき自体に障害がある場合がある。
生活指導と薬物治療で改善される。
三十ハ才、女性。身長153p、体重37s。飲酒、喫煙はありません。もともと胃腸が弱かったのですが、三十三歳のとき、出産を機に悪化し現在にいたっています。つねに胃もたれの状態で胃が重く、二、三年間通院して血液検査、大腸のエックス線、胃カメラなどで調べましたが、ごく軽い胃炎があるだけで、とくに異常はないとのことです。
くすりもかなり強いものまで飲みましたが、あまり効果がないので今は何も服用していません。
最近本や雑誌を見ていて、胃アトニーという言葉を見つけ、自分の症状にあてはまるような気がしていますが、もう少し正確に知りたいと思います。
また、よくなるためにはどんなことをしていけばよいのか教えてください。
(新潟県Y・S)

まずあなたの体型を思い浮かべてみましょう。
身長153p、体重37sですので、肥満度マイナス28・2%のやせすぎ、ということになります。あなたのような体型で同世代の患者さんが、同じ症状を訴えて私の診察室にもよくおいでになります。

 また、質問のなかには書かれていませんが、腹部超音波検査は受けたでしょうか。この検査はぜひ受けたほうがよいと思います。

 さて、ご自分で勉強されて「胃アトニー」という病名を見つけられましたが、この病名は少し古い呼称です。
 最近は「NUD(NonUlcer Dyspepsia)」あるいは
「機能性胃腸症・FD(Functional Dyspepsia)と呼ばれています。
 症状は胃部膨満感、悪心、食欲不振、胃もたれ感、胃が重いなどの不定消化器症状であり、血液検査、胃カメラ検査、超音波検査、大腸検査を行っても異常なし、と診断されます。胃の緊張、排出低下にともなう胃排出遅延によりおこる病気と考えられています。
食道や胃になんらかの病変(器質的異常)がなくても、そのはたらき自体に障害を認めるため、機能的異常と呼ばれる疾患の一つです。

 症状を訴えていろいろな検査をしても、大丈夫ですよ、と診断される。
でもくすりで症状がよくならない。
ほかの病院で再度精密検査を行っても心配ない、といわれる。
しかしさっぱりよくならないのでドクターショッピングをくり返す。
NUD・FDの患者さんのなかにはそのような人がたくさんいると思います。

 治療は、生活指導と薬物治療が基本です。食事はあわてず、ゆっくり、よく噛んで、適量を食べます。食べすぎは、胃の過伸展をきたしますので、とくによくありません。また、食後すぐの運動・仕事はいけません。食後すぐ横にならないことも重要です。
さらに香辛料、コーヒー、濃い緑茶はできるだけさけましょう。

 もしあなたが、胃部症状のほかに「胸やけ、げっぷ、酸っぱい水がこみ上げる」といった症状もあわせて認められるようなら
「胃食道逆流症・GERD(Gastro Esophageal Reflux Disease」の可能性もあります。この場合には、プロトンポンプ阻害薬、H2ブロツカーが著効をきたす場合があるので内服して症状の変化を見ましょう。もし前出の症状がない場合は、消化管運動機能改善薬を処方してもらいましょう。

 それでも症状が改善しないときは、心療内科、ストレスドック、心理カウンセリングをお受けになってはいかがでしょうか。
ストレス社会の現代において、本人が意外に気づかないストレスにさらされている場合があります。出産後の症状出現ですし、十分お話をして、ご自身のストレスを浮き彫りにしてご自身も納得できれば、それだけで症状が軽快することもあります。

 また、精神安定薬、抗不安薬、軽い抗うつ薬の内服で、スーツと肩の力が抜けて胃部症状が楽になることもあります。

 一日も早く適切な治療を受て快適な毎日をおすごしください。