長野内科胃腸科

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メディカルチェック

東北ジャーナル』掲載記事

第10話 膵臓のお話し

9月と言えば昼間は汗ばむ陽気でも、朝晩はめっきり冷え込みます。
冷えたビールより冷酒、熱燗が恋しくなる季節が近づいてます。
肝臓とともにお酒と関係の深い、膵臓のお話しをします。

膵臓とは?

 膵臓は解剖学的に胃の後側(背側)にあります。
インシュリンを分泌し血糖のコントロールを行ったり、たんぱく質、脂質、糖質を消化する多くの酵素を含んでいる膵液の分泌をします。
あまり目立ちませんが、大変重要な働きをしているのです。
膵臓病のなかでも代表的な急性膵炎と膵がんの解説をします。

急性膵炎

突然発症する上腹部の激痛です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍とは違う痛みで、どちらかというと急性胃炎に近い痛みです。
また胆石症の痛みは、"転げまわるような痛み"と表現されますが、膵炎の痛みは"えびのように体が2つ折りになる痛み"と表現されます。
原因は胆石などの胆道系疾患やアルコールの多飲、暴飲暴食です。
このような症状や血液検査のアミラーゼ値測定などにより診断をつけます。
また、腹部超音波検査(エコー)や腹部CT検査も診断を付けるために有力な方法です。
治療は、まず入院し絶対安静、点滴治療です。
痛みが治まったら流動食から粥食へとゆっくり食事を開始します。
経過が順調な場合でも、約20パーセントの方が早期ショックで命を落すことがあるので、油断できません。

膵臓がん

 50歳以上の高齢者に多く、男性が女性の2~3倍の発生率です。
前述したように膵臓は胃の後側にありますので、「なんとなく胃のあたりが調子悪い」、「胃もたれする」などの症状があって胃の検査を行っても異常が無く、様子をみているうちに進行膵臓がんが見つかった、ということがあります。
 膵炎同様に腹部超音波検査や腹部CT検査が有用です。
またERP(内視鏡的逆行性膵管造影)という専門の精密検査もあります。
 治療の原則は手術ですが、早期発見が困難なこともあり、手術時にはすでに肝臓などに転移して切除不能に終わる場合が少なくありません。
そのような場合、パイパス手術を行うことになりますが、予後はあまり期待できません。

膵臓病の食事療法

膵臓は消化器のなかでも、特に食事との関係がたいへん深い臓器です。
食事を取ることにより膵液の分泌が活発となり、症状が激しくなることがあるからです。
急性期は脂肪の制限、たんぱく質の制限を行い、炭酸飲料、カフェイン、香辛料は禁止です。
ビタミン、ミネラルの不足に注意し薄味にします。
慢性期は糖質(砂糖、柑橘類以外の果実、芋類)を中心にビタミンB1の補充に努めます。
アルコール類は引き続き禁止です。

お酒を続けられるように、上手に呑みたいものです。
ご希望の読者は、個別指導します。
費用はあなた持ちですよ(冗談)。

第11話 賢い患者になるために

1年間このコーナーをお読みいただいてありがとうございました。
みなさまの健康管理に、少しはお役に立てましたでしょうか?
 さて、総集編パート1として今月のテーマは、「賢い患者になるために」です。

インフォームドコンセント(十分な説明と同意)からカルテ開示へと医療界も改革がどんどん進んでいます。
医療もサービス業なのだからと、患者さんの名前を呼ぶ時に「○○さん」から「○○さま」へと変えている病院もあります(この呼び方には、賛否両論があるのですが)。
医療業界も危機意識を持って意識改革を行いはじめた、というところでしょう。

変わる必要があるのは病院側だけでしょうか?
医療は病院(医師、看護婦、パラメディカル)と患者さんとの共同作業、つまりキャッチボールのようなものだ、と常々考えています。
患者さんも自分の権利を堂々と主張するとともに、患者さんが病院側へ正確に伝えるべき個人情報があります。
そこで今回は、実際にあなたが病院にかかるときのコツをお教えしましよう。

まず、自覚症状です。どのような症状がいつ頃から出てきたのか、まとめておきましょう。
また薬により、じん麻疹が出たり、気持ちが悪くなったことがないか、食物によるアレルギーはないか。
女性の場合は妊娠しているか、赤ちゃんに母乳をあげているかどうかは、検査や投薬の選択に関係があるので、はっきりと告げましょう。

次にあなたが過去にかかった病気についてです。
手術を受けたことがあるかないか。
受けたとすればどんな手術か。
急性虫垂炎(盲腸)も手術の一つですよ。
高血圧や糖尿病といわれたことはないか。
また、現在治療中の病気があれば、病院名と内服薬の名前、量を把握しておきます。
良く分からない場合は、病院からもらった薬剤一覧や薬剤ノートを持って行きます。
見あたらない場合は、飲んでいるお薬をすべて持って行きましょう。
薬の飲み併せは、副作用などが増える場合があり、重要な事項です。

それから、ご家族(血縁)の病気についてです。
特にがんで手術を受けたり、亡くなった方がいるか。
脳卒中、高血圧、糖尿病、心臓病の方がいるか。
遺伝の要素が考えられる病気に対しては、ご家族の病歴をしっかりと把握しておきましょう。

最後に嗜好品です。酒は毎日呑むか、ときどきか、量はどれくらいか。
煙草は1日何本、何年間吸っているか。
1日の喫煙本数×年数が600を超えますと肺がんになる危険度が増します。

以上の事項をまとめておいて、担当の先生にスラスラと答えられれば、あなたは病院にかかる達人です。
自信を持って(?)病院に行きましょう。

第12話 1年間ありがとうございました

総集編パートⅡとなる今月のテーマは、
「今年1年を振り返り、来年へ向けて」です。

2001年は北陵クリニック事件で1年が明けました。
全国版ニュースやワイドショーで連日のように取り上げられ、雪が積もったクリニックの外観は記憶に新しいところです。
事件は有床診療所に関する問題から准看師問題、救急治療問題へと、さまざまな波紋を引き起こしました。

介護保険制度も2002年4月で2年目を迎え、みなさんの間にも定着しつつありますが、介護度判定、多忙なケアマネージャー業務、在宅看護における家族の疲労など、さまざまな問題が指摘されています。

2001年9月には仙台市急患センター(電話022-266-6561)が若林区舟丁にオープンしました。
石名坂診療所が移転し、リニューアルしたもので、内科、外科、小児科、整形外科、婦人科、眼科、耳鼻科の七科体制でスタートしました。
夜間や休日の急病は誰でも不安を覚えますので、仙台市民や出張・旅行者の心強い味方となるでしょう。

さて、あと1ヶ月足らずで21世紀最初の本年も幕を閉じようとしています。
来るべき2002年はどのような年になるのでしょうか。
毎月のように新聞に出る医療事故や医療ミス事件、そして医療裁判の記事。
医療従事者による一瞬の気の緩み、単純ミスの重なり、患者側と病院側のちょっとした誤解などが傷口を広げていったような事件もたくさんあるのではないかと思います。

また、年々増え続ける医療費対策も、付け刃的対策ではなく、抜本的改革が必要と言われ続けてもう何年にもなります。
雪だるま式に増え続ける老人医療費も課題の一つです。
国民皆保険制度も限界であり、さまざまな制度疲労を引き起こしています。

今後も医療はますます専門細分化していきます。
総合病院・大学病院では、内科一つをとっても、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、腎臓内科、血液内科、膠原病内科と分かれ、最近では大学病院にも総合診療科  (プライマリーケア)という科も出現しています。
自分が何科の外来を受診すれば良いのか分からない患者さんもたくさんおられると思います。

医学研究の分野では、遺伝子治療、クローン人間など、研究が進むに従い、ますます医療関係者の生命倫理観が問われる時代になってくるでしょう。
IT革命真っ最中の現代、医業界も時代に乗り遅れないように、患者さんに対して積極的に情報開示を進め、インターネットを使って、医業広告や健康相談などの啓蒙活動を進める必要があると思います。

最後になりましたが、1年間の間、小生の拙文をお読みいただいてありがとうございました。
みなさまのご健康と、来年がみなさまにとって良い年になるように祈りながら、締めのご挨拶といたします。
本当にありがとうございました。

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